『可愛い彼女』


「最悪。」

 ブスッとした表情でレナは言った。頬なんか膨らませちゃって……本当可愛い奴だ。
 俺とレナは今、高校二年生。青春真っ最中だ。そんな俺は只今、レナに片思い中なワケでし て……。いやっ、だってマヂで可愛いンだぜ!?俺を見上げる時の顔とか、機嫌損ねて怒っ た顔とか……。ヤベぇっ。思い出したら鼻血出そう……。!!……はい。俺はどーせ変 態ですよぅ。それの何が悪いんでぃ!!好きな子の可愛い顔見たら、男はそう思うだろう!! 理性失いかけるだろっ!?……え?鼻血は出さない?……ははっ。まぁ……うん。


 話を変えよう。俺とレナは幼稚園からの所謂……幼馴染という奴で、それはそれは仲がよ ろしかったのだ。……文法が変なのは気にするな。いつもの事だ。……で、なんでしたっ け?……嗚呼、そうだった。でまぁ、腐れ縁ってヤツで、幼稚園の頃から高校生になった今 迄、ズリズリと一緒に居るワケだ。いつの間にか俺がレナに向ける感情は、友達としての「す き」から男女の「好き」に変わったのだ。漫画では在りがちの展開だ。しかし長年一緒に居る のだか、そんな展開になるのは致し方無い事だと思う。相手の良い所や悪い所を見てきて、惹 かれるのは。だがそれ故、己の想いを伝えられないのだ。互いに知り過ぎているから。つい、 意地を張ってしまう。それが男女というものだろう?



「シンジ?」

 レナが俺の名を呼ぶ。その度、胸の奥が締められる。脳が、痺れる。甘く、酔い痴れてしま いそうな……その疼き。それだけで理性がぶっ飛びそうになる。だけど……我慢だ。彼女 への想いだけが俺の理性を失わせ、彼女への想いだけが俺の理性を繋ぎ止める。 皮肉なもんだな……。

「シンジ?何さっきから呆けっとしてるの?熱でもある?」

 レナが心配そうに、俺の顔を覗き込む。うぅ……マヂ可愛い。

「いや、大丈夫だよ。全然熱とかないから」

 俺は我を取り戻し、心配しているレナを安心させる為、「平気だ」と笑って言った。レナは 「そう?」とまだ心配そうな顔つきで聞いてきた。そんなレナが可愛過ぎで抱きつきたい衝動 に駆られるが、ここは我慢だっ。

「そんな心配すんなって。唯考え事してただけだって」
「考え事?何の事を考えてたの?」

 しまった……。俺は墓穴大王かもしれない……。レナの円らな瞳がキラキラと輝きだし た。しかも、その瞳は俺(のハート)を捉えている。今度は俺自身が、己の理性をぶっ飛ばす原 因を作ってしまった。こんな俺を墓穴大王と形容しないで、なんと形容できよう?変態大魔神 か?……洒落にならない。

「ねぇ、何の事?」

 嗚呼、馬鹿っ!!それ以上近づくなっ。狼(俺)に喰われるぞ!?嗚呼、どうしたものかっ? これ以上は本当にヤバイっっ……!!!

「シンジってばっ!」

 嗚呼もう、如何にでもなりやがれっ!!

「お、お前のことだよ!!」






「え?」









 遂に言ってしまった……。

「……私の事?」
「……ああ、そうだよ」
「……私、熱なんか無いよ?」

 ……はぁ?何を言っているんだ、この女は?キョトンと首なんか傾げて、レナは言った。 その仕草も堪らないぜっ……!!

「シンジってば心配性なんだからぁ」

 あはっと、レナは可愛く笑った。何もかも眩しすぎる。その天然さえもgoodだ!! まぁ、俺の一世一代(?)の告白も無に終わったのだが。ガクッと肩を落としている俺の背中を ポンっとレナは叩き、「帰ろっか」と微笑んで言った。

「そうだな……。帰るかぁ」

 まぁ……暫くは此の侭で。







































「びっ、吃驚したぁ」

 俺が顔を真っ紅に染め、そう呟いたレナに気付くことは無かった。
























END